20040327@下北沢BIG MOUTH

20040327@下北沢BIG MOUTH
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1.Art Forum
2.Transparency (bossa version)
3.春の眠り
4.スロウ・スターター (fast version)
5.Life
6.Ame

★全曲とも、泉輝紀と大樹氏の共同アレンジ

泉輝紀にとって、下北沢BIG MOUTHでのライブは2ヶ月ぶりとなる。今回は「アコースティック・トライアル」と銘打ち、前回の渋谷PLUGでの「エレクトロニック・トライアル」とまさに対極の試みとなる。近年、コンピューターを併用したライブ活動に取り組んできた泉にとっては、初めてのアンプラグドのライブである。ギターにアジアサンライズの大樹氏を迎え、全曲とも彼との共同アレンジによって、いつもと全く異なった表情をもつ曲の数々を聴かせてくれた。大樹氏はパワフルなボーカルと躍動感溢れるギターサウンドに定評のある実力派シンガーソングライターである。

会場のBIG MOUTHは、いつの間にかカウンターの位置が変わっていて、よりゆったりとくつろぐことのできるアットホームな空間になっていた。こぶりなライブハウスであるが、観客とミュージシャンとの密接な距離感が嬉しい。大樹氏とのコラボレーションというのも手伝ってか、会場は満員状態であった。

1.Art Forum
泉の楽曲は噛めば噛むほど味の出る「スルメ」系の音楽である。一聴しただけではなかなかその曲の本当の良さは理解できない。逆に何度も聴くことで、メロディーメーカーとしての彼の楽曲がいかに洗練されているかがはっきりと理解できるのである。この「Art Forum」は1stアルバム「New World」のラストを飾る曲である。今回のアレンジは、きっとはじめて聴いた人に対しても、すんなり受けいれることのできる、人間的な暖かさを兼ね備えていたのではないだろうか。これぞアコースティックの醍醐味である。身体に直接語りかけて来るようなギターの旋律…。大樹氏が奏でる伸びやかなギターの存在感に驚かされた。(作詞─Keiichi Kumakura氏)

2.Transparency (bossa version)
1stアルバム「New World」収録曲。原曲は空中を舞い、海原を突き抜け、水面へと吸い込まれていくような透明感あふれるアレンジに対して、今回は南国の香り漂うボサノバ風のアコースティック・アレンジに仕上げていた。ここまでのアレンジの変化を大胆にやってのけてしまう、泉と大樹氏の音楽の感性には脱帽させられる。どのようなバリエーションのアレンジに仕上げてもしっかりと作曲者の芯の強さが残っているということは、それだけもともと丁寧に作り込まれた楽曲であるといえよう。のんびりと心地よいボーカルとギターの音色に、身をゆだねて聴いていた。(作詞─Keiichi Kumakura氏)

3.春の眠り
前回の渋谷PLUGと基本的には同じ弾き語りスタイル。「ギターとの絡みを考慮して、ピアノの音数を半分に減らした。いい『間』が出来て緊張感を高める効果があったと思う」とのこと。激しい展開をする曲が多い中、この曲は、4小節のコード進行をリピートさせることで、シンプルにじっくりと味わい深く聴かせることに成功している。人間の「鼓動」のような身体的なリズムによる安堵感を得ることができた。(作詞─Keiichi Kumakura氏)

4.スロウ・スターター (fast version)
マキシシングル「レッド・スカイ」の3曲目。この日のライブの目玉の一つ。ダウンテンポの曲が続く中での攻撃的な曲。原曲はとてもダークで緻密なアレンジに仕上がっているのだが、この難しい曲をよくここまでアコースティックに落とし込んだものだと感心させられた。スピード感のあるギターとエレピの掛け合いが、とても楽しい。大樹氏の迫力あるギターのカッティングなしでは、このアコースティックの「スロウ・スターター」は、完結し得なかっただろう。泉と大樹氏の化学反応が如実に感じられた曲である。

5.Life
前回の渋谷PLUGでプレイしたアレンジ、Arpeggio version に沿ったもの。ギターアルペジオの音階は原曲でのベースラインとほぼ同じである。特にこの曲は、映画音楽でも聴いているかのような、情景豊かなイメージが広がってゆく。彼自身はこのバージョンを「日本昔ばなしバージョン」と呼んでいるそうである。「夕暮れの山道をトコトコ帰るような和のイメージも似合うと思う」とのこと。

6.Ame
泉と大樹氏によるコラボレーションの最後の曲は、代表曲の一つである「Ame」。この曲は通常のライブの弾き語りに沿ったものである。「エンディングの『雨音が消えないうちに』と繰り返し歌うパートは、大樹さんのアイディアで徐々にマイクから離れて行って、最後は地声のみを聴かせるようにした。自分には無い発想で新鮮だった。」とのこと。よりリアルに「Ame」に描かれている世界を味わうことができた。

泉輝紀と大樹氏によるコラボレーションは泉の新しい局面をのぞかせた。泉のしっとりとした声とエレピのサウンドは、どこかさみしくもあり、まるで「月」のような繊細さであり、優しく静かな輝きを放っていた。一方、大樹氏の熱いギターサウンドは、まるで灼熱の「太陽」を思わせ、強く激しい輝きを放っていた。そんな「月」と「太陽」が一つになる瞬間に、心地よく琴線が揺さぶられ続けた、一夜の出来事であった。

文─今東淳雄

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